行灯のほのおがチロチロと揺れる音が聞こえるような気がして、歌仙兼定はほおづえをついて灯りを眺めた。大勢の刀たちが暮らす本丸も、夜更けには静まり返る。
「今日は一段と静かだね。一人いないだけなのに」
歌仙はかたわらにいる山伏国広に話しかけた。
「僕らも主のために、そのうち旅に行くべきだろうな。行き先は考えているかい」
歌仙が問いかけたが、山伏は無反応で天井をぼんやり見ている。山伏の顔を歌仙は覗き込んだ。
「山伏くん?」
「う、うむ。そうであるな」
精彩を欠く返答に、歌仙は形のよい眉をひそめた。
「寝ぼけているのか」
「すまぬ。どう答えるべきか迷ったのである」
「やっぱり寝ぼけてるじゃないか」
歌仙はフンと鼻を鳴らして体を戻し、再びほおづえをついた。山伏は歌仙に表情を見られたくないかのように、歌仙に背を向けた。
「拙僧は…………修業不足で、とても極の旅など」
「きみがそんな弱音を吐くなんてね。やはり寝ぼけているんだろう。足りないのは修業ではなく、睡眠じゃないか?」
「誰のせいだと」
「冗談さ、わかっているだろう」
歌仙は山伏の体をつかんで、無理やり自分のほうに向かせると、いたずらっぽく笑った。
「僕はたのしみさ。明日にだって出かけてもいい。もっとも、訪ねていくのだから、それなりの身支度が必要だ。もう少し時間がほしいな」
山伏は、にこにこと語る歌仙の口もとを黙って見つめた。
「彼がいなくなった後の世界に、どんな風雅なものがあるかたくさん教えてやりたいね。僕の元主なら、僕がどんなに感動したかわかってくれるはずだろう」
歌仙は山伏に身を寄せ、そのかんばせに手を触れた。
「そうだな、きみのことも話してみようか。僕と君がこうして並んでいる様子は、たいそう趣深いと思う」
歌仙の手が、山伏のすこし汗ばんだ短髪をくしゃりと撫でた。山伏はようやく歯を見せて笑った。
「それでは、拙僧は歌仙殿の旅に同伴すればよいのか?」
「実際に見てもらったほうがわかりやすいが、きみのお守りをしながらはねえ」
「む、拙僧が歌仙殿の面倒を見るものだと」
ふたりはジロリとにらみ合う。
「…………」
「…………」
「ふふ」
「カッカッカ」
おでこをくっつけてふたりは笑い合った。
となりに並んで
とうらぶ