ツイステ

歯止めがきかない

「プレゼント、さっそく使ってるよ〜。ありがと」 もらった歯ブラシの使用報告をすると、トレイは満足そうに目を細めた。「少しヘッドを小さめにしたんだ。我ながらケイトにピッタリのものを選べたと思う。気に入ってくれたらうれしいよ」「えーっと…...
とうらぶ

口づけまで遠すぎる

 山から吹き下ろしてきた風が、歌仙兼定の髪をそよそよと揺らす。歌仙は、腕に抱えた洗濯物が飛んでいかないように端を押さえた。「歌仙、次をこちらに」 すでに干してある服と服のすき間から、山伏国広がひょこっと顔を出した。「これを頼む」 歌仙が洗...
とうらぶ

あらわとなればちりぬべし

 もうすぐ兼さんが遠征から帰ってくるなあ。そんなことを考えながら切った野菜を皿に盛りつけていた堀川国広は、味噌汁の吹きこぼれる音に気付いて振り返った。「わわわ! たいへん!」 堀川は急いでコンロの火を止める。この本丸の厨房は審神者就任一周...
とうらぶ

となりに並んで

 行灯のほのおがチロチロと揺れる音が聞こえるような気がして、歌仙兼定はほおづえをついて灯りを眺めた。大勢の刀たちが暮らす本丸も、夜更けには静まり返る。「今日は一段と静かだね。一人いないだけなのに」 歌仙はかたわらにいる山伏国広に話しかけた...
とうらぶ

はなまる夏休み

 ふと顔をあげると審神者が机に突っ伏して寝ていたので、堀川国広はタオルケットをそっとかけてやった。部屋のすみに置かれたタンスの上の時計を確認すると、午前一時をまわるところだった。ここ数日、通常業務に加えて審神者自身が増やした仕事に追われて...
とうらぶ

時間差クリスマス

 酒はたしなむが、味がわからなくなるまで飲むのは無粋の極みだ。それが歌仙兼定の持論である。 ひっくりかえって大いびきをかいている新選組の刀たちを踏まないように、歌仙はそっと宴席を後にした。審神者主催のクリスマス会もとい大宴会はおおいに盛り...
とうらぶ

殺し文句と足払い

 古いホテルを改装した珍しい造りの本丸、その三階の角部屋で男がひとり、窓辺に置かれたソファに深く沈み込むように座って本を読んでいた。窓から差し込む西日が彼の顔に影を落としている。長い時間そこに座っていたらしく、羽織にしわがよっている。サイ...
とうらぶ

油断大敵

 日がとうに沈んだというのに、明かりもついていない薄暗い部屋。その中央に山伏国広は座していた。山伏装束の全身がほこりと血にまみれ、今すぐにでも手入れが必要なようだった。右腕の傷にそっと触れる。瞬間、痛みで体がふるえ、胸に苦々しいものがせり...
とうらぶ

花占い

 洋館の廊下に敷きつめられた赤いカーペットは足音を、そして着物の衣擦れの音さえも吸い取ってしまいそうだった。 昼食の後片付けを終え、歌仙は3階の自室へ戻るため廊下を歩いていた。 玄関ホールに差しかかったとき、誰かの話し声が聞こえた。立ち話...
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