「プレゼント、さっそく使ってるよ〜。ありがと」
もらった歯ブラシの使用報告をすると、トレイは満足そうに目を細めた。
「少しヘッドを小さめにしたんだ。我ながらケイトにピッタリのものを選べたと思う。気に入ってくれたらうれしいよ」
「えーっと……。まあ、たしかに使いやすかったかな」
ほおをかきながら、トレイの隣に腰を下ろした。二人分の体重で、ベッドのスプリングが小さく軋んだ音を立てる。
「ていうか、トレイくんてさ〜、すぐ人の口内環境のお世話しようとするよね。ちょっとは遠慮しなよ?」
軽くこづくと、トレイはいつもの困ったような微笑みを浮かべた。
「弟たちの仕上げ磨きは俺の役目だったからな」
「その理由は聞き飽きたって〜」
ケイトにはお兄ちゃんスマイルは通じない。ジトリとトレイの顔を覗き込むと、ふいにトレイは真顔になった。
「それ以外にも理由はあるぞ」
「なに……んぐっ」
突然体が引き寄せられ、抵抗する間もなくトレイの舌がケイトの口内に侵入していた。
「ん……、む……!」
舌先で歯列をなぞられ、ケイトの背すじがぞくぞくと震える。ケイトは抵抗してトレイの肩を殴るが、舌を絡め取られて力が抜けていく。
ぢゅう、と大きな水音を立てて吸われて、ようやくケイトは解放された。
「……っは、いきなりどしたの」
強引な口づけに息も絶え絶えなケイトは、トレイをねめつける。
「うん。やっぱりな」
トレイは唇をぺろりと舐めて、ひとりうんうんとうなずいている。
「なにが」
「ケイト、今日の夕飯はB定食だったろ」
「は?」
トレイはにっこりと笑う。その顔は、どう見てもお兄ちゃんではなかった。
「ケイトの八重歯のとこ、おいしいんだ」
「お………………っ」
絶句。
「八重歯の辺りはカーブしていて、案外磨きにくいんだ。磨き残しは虫歯の元だぞ、ケイト」
今日イチのスマイルに、ケイトは体ごと後ずさった。
「これから毎日、ちゃんと磨けてるかチェックしていくからそのつもりでな。ああもちろん、今日からだ。厳しく磨き方をレクチャーしてやろう」
どこからともなく取り出した歯ブラシやデンタルフロスを構えるトレイに、ケイトは口を覆って震え上がった。
「か、勘弁して〜!」
